コンバインドサイクルとは|汽力との差分11語で覚えるGTCC用語集

汽力からGTCCへ移る、あるいはGTCCプラントへの配属が決まった 系統図を開いたら、FDFがない AHもない 覚え直しかと不安になっていませんか?
俺は汽力からGTCCへ転職しました
一から覚え直しを覚悟していましたが、実際に必要だったのは差分だけでした
初出社で最初に感じたのは、とにかく綺麗なことです
プラントが新しいのもありますが、燃料がLNGなどのガス系で石炭がないのが大きいです
一方で同じ蒸気ドラムなのに水位計が二色水面計からマグネット式に変わっていたりして、「同じ機器でも方式の差分がある」と実感しました
コンバインドサイクル(GTCC)は汽力の主幹系統27語が入っていれば、差分で覚えられます

対象読者はこんな方です
- 電験・エネ管など試験勉強中の方
- GTCCプラントに配属される新人・転職者の方
- 汽力経験者で、GTCCに移ったら何が変わるのか知りたい方
コンバインドサイクルとは|1つの燃料で2回発電する仕組み
結論から書きます
コンバインドサイクルとは、ガスタービン(GT)と蒸気タービン(ST)を組み合わせ、同じ燃料で2回発電する方式です GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)という略称もメーカーの製品名になるほど定着しています
磁力マルGT=ガスタービン、ST=蒸気タービン、GTCC=その合体でち!まずここだけ押さえるでち!
汽力との違いは1文で言えます
汽力はバーナでボイラを焚いて蒸気を作る GTCCはガスタービンの排熱がバーナの代わりになる
流れを並べるとこうです
- 汽力: バーナ→ボイラ→蒸気→ST→発電機
- GTCC: 吸気→圧縮機→燃焼器→GT→発電機①、GT排ガス→HRSG→蒸気→ST→発電機②
GT自体がまず発電し、捨て熱でもう1回蒸気発電する二段構えです
従来型の汽力が40%前後なのに対し、最新のGTCCはメーカー公表値で64%超(LHV基準) 実プラントでも中部電力の西名古屋発電所が63.08%(LHV)を達成し、2018年に世界最高効率のギネス認定を受けました(記録はその後も更新が続いています)
1つ種明かしです サイトによって効率が「60%台」だったり「50%台」だったりするのは、発熱量の基準(LHVとHHV)が違うからです
ガス焚きの効率評価は一般にLHV(低位発熱量)基準ですが、国の資料などはHHV(高位発熱量)基準の場合があり、同じプラントでも数ポイントずれて見えます



俺も調べ始めた頃、サイトごとに数字が違って混乱しました 嘘ではなく基準が違うだけです
効率の数字を見たらまずLHVかHHVかを確認してください
ちなみにGTCCはタービン入口温度のクラスが上がるたびに世代の別名が付いてきました 「入口温度が上がるほど効率も上がった」と押さえれば十分です
汽力の主幹系統から「消える系統・化ける系統・残る系統」
この記事は、汽力の主幹系統用語集27語を知っている前提で、差分だけを書きます


汽力の4系統は、GTCCではこの3つに仕分けられます
- 消える: 通風系まるごと(FDF/AH/IDF/GRF/GMF)SCRだけはHRSGに内蔵されて生き残ります
- 化ける: ボイラ→HRSG(バーナのない”焚かないボイラ”へ)
- 残る: 復水給水系・蒸気タービン系はほぼそのまま



FDFもAHもIDFも消えるでちか!?汽力発電で覚えたばっかりでちよ!



消えても無駄にはなりません
なぜ通風系が必要だったかを知っていれば、なぜGTでは要らないかが一発で分かります 汽力の理解の上にGTCCが乗ります
通風系が消える理由は、GTの圧縮機が空気の押し込みを一手に担うからです GTCCには通風機などのボイラ補機が必要ない、と公的資料にも明記されています
仕分けを表にします
| 汽力の系統 | 主な用語 | GTCCでは |
|---|---|---|
| 通風系(6語) | FDF/AH/IDF/GRF/GMF/SCR | 消える GTの圧縮機が代役(SCRだけはHRSGに内蔵されて残る) |
| ボイラー系(7語) | 節炭器/蒸気ドラム/過熱器/再熱器 など | 化ける HRSGへ バーナがなくなり、ドラムは多重圧化 |
| 復水・給水系(7語) | 復水器/CP/グラコン/脱気器/BFP など | 残る ほぼそのまま(細部に差分あり・後述) |
| タービン系(7語) | MSV/GOV/HP/IP/LP など | 残る ほぼそのまま(STの分担は小さくなる) |
補機が減れば所内で使う電力も減ります 所内比率はGTCC約2.5%に対し、微粉炭焚き5.5〜6.5%程度という公的資料の整理もあります
では、差分を系統ごとに見ていきます
ガスタービンの仕組みと主幹系統|新しく覚える6語
まずは主役のガスタービンです GTは圧縮機・燃焼器・タービンの3要素で構成されます
吸気→[圧縮機]→[燃焼器]→[タービン]→HRSGへ
空気の流れ順に、燃料系まで含めて6語並べます
吸気フィルタ(Air Intake Filter)
- 定義
-
大気をろ過してGTへ送る吸気設備 吸気室・消音装置を含む
- 現場では
-
フィルタ差圧の監視が日常業務です 汽力のFDF入口と違い、機械(圧縮機・タービン翼)を守るためのろ過が主目的です 雨が降ったり湿度が高いと差圧が上がる傾向があります
圧縮機(Compressor)
- 定義
-
吸い込んだ空気を高圧に圧縮して燃焼器へ送る、GT3要素の1つ目
- 現場では
-
汽力のFDF+AHの代役はこいつです 空気を押し込む仕事(FDF)も、燃焼用空気を高温にする仕事(AH)も、圧縮の1動作に集約されています 「消える系統」の種明かし役です
入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)
- 定義
-
圧縮機入口に付いた可変翼 開度で吸込空気量を調整する
- 現場では
-
部分負荷でIGVを絞って排ガス温度を保ち、コンバインド効率を維持する制御に使われます 開度は
DCS画面で常時監視する重要パラメータです



IGV=Inlet Guide Vane、入口の可変ルーバーのイメージでち!羽の角度で吸い込む空気の量を変えるでち!
燃焼器(Combustor)
- 定義
-
圧縮空気に燃料ガスを混ぜて燃焼させ、高温ガスを作る装置 GT3要素の2つ目
- 現場では
-
役割は汽力の「バーナ+火炉」に相当しますが、火炉のような巨大な部屋ではなく、コンパクトな缶の中で連続燃焼させるイメージです NOxを抑える低NOx燃焼器が一般的です
タービン(Turbine)
- 定義
-
:高温高圧ガスを膨張させて回転力を取り出す、GT3要素の最後の1つ 圧縮機と同軸
- 現場では
-
面白いのは、取り出した動力の相当分を同軸の圧縮機自身が消費し、残りが発電に回る構造です タービン入口温度はGTの世代を示す指標です
燃料ガス系統(Fuel Gas System)
- 定義
-
LNG・都市ガス系の燃料をGTへ供給する系統 LNGは気化器で気化して送る
- 現場では
-
汽力の微粉炭機や重油系統と入れ替わりで登場する系統です 石炭のように「砕いて運んで焚く」工程がなく、配管でガスが届きます プラントによっては昇圧設備を持ちます
HRSG(排熱回収ボイラ)|汽力ボイラとの差分で覚える2語
次は「化ける系統」です



俺のHRSG第一印象は、補機が少ないことでした
一番戸惑ったのは三重圧です 蒸気ドラムが3つある 汽力は1つだったので、系統を追うのに最初は苦労しました
GT排ガスの流れ順に2語並べます
排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)
- 定義
-
GTの排ガスから熱を回収して蒸気を作る熱交換器
- 現場では
-
バーナがありません 汽力ボイラの「火を焚く」機能はGT排気が丸ごと代替するので、ボイラ側に点火操作という概念が存在しません 「焚かないボイラ」と覚えるのが早いです
多重圧ドラム(HP/IP/LPドラム)
- 定義
-
高圧・中圧・低圧の複数セクションで段階的に蒸気を作る構成 三重圧が代表格
- 現場では
-
汽力の「蒸気ドラムは1つ」との一番大きな差分がここです 復水ポンプ→低圧節炭器→低圧ドラムと入り、高圧・中圧の節炭器・蒸発器・過熱器へ並列で順次つながります
部品名自体は汽力と共通です
蒸気タービン・復水給水系|ほぼ汽力と同じ
「残る系統」です 復水器・CP・脱気器・BFP・ST(MSV/GOV/HP/IP/LP…)はほぼ共通なので、個別の解説は全部汽力発電所の用語集にあります


俺が見てきた範囲の差分だけ列挙します
- STの分担は全体の約1/3と小さい(詳しくは次の章で)
- 給水加熱器がなく、復水予熱器がある 給水を温める主役がタービン抽気からHRSG側に移るためのようです
- グラコンはGTCCにもあります
- 復水器の空気抽出はエジェクター式と真空ポンプ式の2方式 俺は両方経験しましたが、どちらが主流とは言い切れません
なお復水器の冷却は海水冷却が一般的です このあたりは汽力の知識がそのまま通用するゾーンです
汽力運転員がGTCCに来て気付いた違い
最後は「肌感覚」の差分です 新しく覚える運用系の3語(DSS・SFC・一軸型/多軸型)もここでまとめます
AHがいない|空気予熱という仕事ごと消えた
燃焼用空気を予熱するという機能自体が、GTCCには存在しません GTは圧縮機が大気を吸って圧縮するだけ 機器が消えたのではなく、仕事ごと消えたというのが「消える系統」の総括です
起動が速い|DSS(Daily Start and Stop)ができるスピード
- 定義
-
毎日起動停止する日間起動停止運用
- 現場では
-
俺自身はDSS運用のプラントを経験したわけではありません ただ、DSSができるスピードで起動停止ができること、その速さ自体に驚きました 出力変化のスピードは体感で4〜5倍、石炭焚き比だと10倍近い感覚です



汽力のボイラ点火から並列までの長丁場を知る身には、この身軽さは衝撃でした 同じ火力でも別の乗り物です
STが小さい|出力はGT2:ST1
排熱回収方式のコンバインドでは、出力の分担はGTが約2/3、STが約1/3です
汽力のつもりでSTを主役と思っていると驚く比率です
注意点を1つ 「総合出力の7割〜8割強がST側」という数字は排気再燃方式(GT排気を燃焼用空気として汽力ボイラで焚く別方式)の値です 方式が違うと真逆になるので、試験勉強では混同しないでください
起動方式|SFC(Static Frequency Converter)で発電機がモーターになる
- 定義
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発電機をモーターとして駆動しGTを昇速させる、サイリスタ起動方式の装置
- 現場では
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起動時は発電機に電力を送り込み、モーターとして回します 汽力は蒸気でタービンを回し始める GTは”回してもらってから”火が入る この順序の逆転が、汽力経験者には一番新鮮なはずです



発電機がモーターに変身して、GTを回してあげるでち!回ってから燃料に火が入るでち!
一軸型・多軸型(Single-shaft/Multi-shaft)
- 定義
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GT・ST・発電機を1本の軸に直結するのが一軸型 複数のGTと1台の大容量STを組み合わせるのが多軸型
- 現場では
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国内の大型GTCCは、一軸型を複数ユニット並べる構成が基本化する傾向にあります ユニット単位で運転台数を増減でき、広い出力範囲で効率を保てる柔軟さが理由です 多軸型はST大型化で効率に利がある一方、STが単一な分、部分故障時の柔軟性は一軸型に譲ります
そのほか細かい違い
- 燃料がガス配管で届く 貯炭場や重油タンクの風景がない
- 夏に出力が落ちる 気温が上がると空気密度が下がり、圧縮機の吸込空気量が減るため
- 温排水が少ない 汽力の6割程度とされる
新しく覚えたのはGT系6語+HRSG系2語+運用系3語、これだけです
汽力27語が入っていれば、GTCCは差分11語で戦える
消える・化ける・残るで仕分けてしまえば、GTCCの系統図はもう呪文には見えないはずです
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ゼロから27語覚えた汽力時代に比べれば、差分11語は正直、楽です 汽力の土台は消えません 差分で覚えれば怖くないです






