電気は毎日使うのに、なぜ発電所の仕事は知られていないのか

発電所で働いている人に、会ったことがありますか?
俺は発電所の運転員を10年以上やっていますが、仕事と関係ない場所で同業者に偶然会ったことが一度もありません
言い方は少し変ですが、野良の発電所勤務者に会ったことがないんです
友人に「発電所で働いている」と話しても、反応はだいたい「ふーん」で終わります
相手が興味を持っていないというより、そもそも何をしている仕事なのか想像できないんだと思います
俺も説明しようとすると、結局「電気を作っています」としか言えません
でも発電所の中では、運転、保全、電気、計装、化学など、いろんな人が働いています
この記事では、なぜ生活に欠かせない発電所の仕事が、職業としてはほとんど知られていないのかを考えます
先に結論を書くと、理由は地味だからではありません
働く人が少なく、一般の人との接点がなく、うまく動いているほど存在が見えなくなる仕事だからです
発電所の仕事が知られていない5つの理由
俺が感じている理由は、次の5つです
- そもそも働いている人が少ない
- 発電所のある地域に働く人が集まっている
- 一般の人と接する仕事ではない
- 仕事内容を一言で説明しにくい
- 正常に動いているほど表に出ない
これが全部重なるため、発電所で働く人が身近にいないまま大人になる人が多いんだと思います
知られていないのは、価値がないからではなく、出会う機会がないから
まずは人数から見ていきます
発電員・変電員は全国で約3万4,000人

厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagによると、「発電所運転管理」に対応する職業の就業者数は、全国で3万4,390人です
2020年の国勢調査を加工した数字で、職業分類上は「発電員・変電員」と呼ばれます
同じ国勢調査で、日本の15歳以上の就業者は6,546万8,436人です
単純に割ると、発電員・変電員は働いている人全体の約0.05%、約1,900人に1人になります
学校の同級生や会社の同僚だけでなく、これまで会った社会人を全部思い出しても、1,900人にはなかなか届きません
発電所で働く人に会ったことがないのは、珍しいことではないんです
磁力マル約1,900人に1人なら、身近にいないのも不思議じゃないでち!
ただし、この3万4,390人を「発電所で働く人全員」と書くのは正確ではありません
この分類には変電所や電気動力室で働く人も含まれる一方、発電所の保全、化学、事務、警備、協力会社などは別の職業に分類される場合があります
つまり、発電所で働く全員の正確な人数ではありません
それでも、発電所の運転管理に近い仕事をしている人が、全国で見てもかなり少ないことは分かります
俺は「野良の発電所勤務者」に会ったことがない
俺は工業高校を卒業して、そのまま発電所に入りました
業界に入る前、発電所で働いている人に直接会った記憶はありません
働き始めてからは、当然仕事関係で発電所勤務者に会います
でも仕事を離れた場所で、たまたま知り合った人が「自分も発電所で働いています」となったことは一度もありません
発電所は、どこにでもある職場ではありません
発電所がある地域には関係者が集まりますが、そこから離れれば接点は一気に減ります
しかも販売や接客の仕事と違って、仕事中に一般のお客さんと会うこともありません
発電所が作った電気は家庭まで届きますが、そこで働く人の顔までは届かないんです



発電所で10年以上働いていますが、野良の発電所勤務者には一度も会ったことがありません 人数の少なさを知ると、そりゃ会わないよなと思いました
「何の仕事?」と聞かれても、電気を作っているとしか言えない
発電所の仕事が知られにくい理由は、人数だけではありません
仕事内容を短く説明しにくいんです
「発電所で働いています」
「何をしているの?」
「電気を作っています」
だいたいここで会話が終わります
実際の運転員は、ずっと手動で発電量を調整しているわけではありません
秒単位・分単位の通常の出力調整は、ガバナフリーやLFCなどの自動制御が担っています
人がやっているのは、設備の起動と停止、警報が出た時の原因切り分け、設備の隔離、保全への引き渡しなどです
中央制御室でDCSを監視することをメインに、現場を歩いて音や振動、漏れなどを確認する時間もあります
でも、これを発電所を知らない人に短く説明するのは難しいです
相手も仕事内容の前提を持っていないため、次に何を聞けばいいか分かりません
だから「ふーん」で終わります
これは相手が悪いわけでも、説明する側が悪いわけでもありません
仕事をイメージするための最初の地図が、世の中にほとんど置かれていないんだと思います
発電所の種類と、そこで働く5職種の全体像は、下記記事にまとめています





「電気を作る」だけだと、その中に何人いて何をしているかまでは見えないでち!
発電所は、うまく動いているほど誰にも気づかれない
電気がいつもどおり使えている時、発電所のことを考える人はほとんどいません
スイッチを押せば照明がついて、スマホを充電できて、工場の機械も動きます
そのたびに「今日はどこの発電所が動いているんだろう」と考える人はいないと思います
それでいいんです
発電所は、使う人が意識しなくても電気が届く状態を作るための設備です
ただ、その仕組みがうまく動くほど、中で働く人の存在も見えなくなります
何か大きなトラブルがあった時には発電所がニュースになりますが、何も起きなかった一日はニュースになりません
運転員からすると、何も起きない日も、何もしていない日ではありません
警報を確認して、設備の状態を見て、必要な操作をして、次の当直へ引き継ぐ
その積み重ねで、いつもどおりの一日が続きます
発電所の仕事は、何も起きない日を積み重ねる仕事
これも知名度が上がりにくい理由だと思います



別に俺たちが電気を全部支えていると言いたいわけではありません 自動制御も送電も配電も、いろんな仕組みと人がつながっています その中に発電所で働く仕事もあると知ってほしいです
俺が発電所を知っていたのは、親が知っていたから
俺はたまたま、工業高校の電気科に入る前から発電所という仕事を知っていました
親から「将来は発電所に行くといい」と言われていたからです
それで工業高校の電気科へ進み、卒業後すぐに発電所で働き始めました
今振り返ると、これはかなり大きな差だったと思います
親が発電所という進路を知っていたから、俺の選択肢にも入ったんです
もし親が知らず、学校からも教えてもらわなければ、発電所で働こうとは考えなかったかもしれません
知らない仕事は、条件を調べるところまで進みません
向いているか、給料はどうか、交代勤務に耐えられるか、そんな比較をする前に選択肢から消えます
工業高校から大企業を目指す進路については、下記記事に俺の体験をまとめました





仕事の良し悪しを比べる前に、存在を知らないと候補にも入らないでち!
知らないまま選択肢から外れるのが、一番もったいない
俺は、発電所の仕事は結構いい仕事だと思っています
一番大きいのは、安定していることです
電気がこの先いらなくなるとは考えにくく、発電方式が変わっても、電気を作って届ける仕事そのものは残ります
生活にも産業にも欠かせないインフラを扱うため、ビジネスとしての土台が安定しています
少なくとも俺が経験してきた範囲では、給料も比較的良く、休みも取りやすい職場でした
発電所や会社によって差はありますが、いわゆるホワイトな職場に当たる割合は高い業界だと感じています
もちろん「発電所ならどこでも一生安泰」という意味ではありません
発電方式は変わりますし、古い設備が止まることも、会社の状況が変わることもあります
それでも、電気というインフラを扱う仕事そのものが急に無くなる可能性は低いと思います
もちろん、全員に向いているとは言いません
交代勤務が合わない人もいますし、働ける地域は限られます
設備を扱う責任もあり、覚えることも多いです
それでも、存在すら知られずに仕事の候補から外れているのは、ずっともったいないと感じています
発電所の仕事を知った上で「自分には合わない」と判断するなら、それでいいと思います
逆に、仕事内容や働き方を知って「こんな仕事があるなら考えてみたい」と思う人もいるはずです
選ぶかどうかは、知ってから決めればいい
発電所運転員の年収は 下記記事にまとめています


交代勤務の実態は下記記事にまとめています


必要な資格は下記記事にまとめています





発電所への就職を全員に勧めたいわけではありません ただ、知らないまま選択肢から消えるのはもったいないです まずはこういう仕事があると知ってもらいたいです
まとめ まず「こういう仕事がある」と知ってほしい
発電所の仕事が知られていない理由をまとめます
- 発電員・変電員は約3万4,000人で、就業者約1,900人に1人
- 発電所のある地域に働く人が集まり、業界外で出会いにくい
- 一般のお客さんと直接接する仕事ではない
- 実際の仕事内容を「電気を作る」以上に短く説明しにくい
- 何も起きず正常に動くほど、仕事の存在が見えなくなる
電気は毎日使われています
でも、その電気を作る場所でどんな人が働き、何をしているのかはほとんど知られていません
俺がこの記事で一番伝えたかったのは、発電所はすごいという話ではありません
世の中には、発電所で働くという選択肢もある
まずはその存在だけでも、もっと多くの人に知ってほしいと思っています
発電所の種類と5職種から全体像を知りたい人は、下記記事から読んでみてください











