発電所の種類と仕事|火力・水力・原子力と5職種を運転員が解説

発電所にいろんな種類があるのは何となく知っています、でもそこで人が何をしているかまでは想像できますか?
未経験の人から見て、発電所の何が一番わかりにくいんだろう、と考えたことがあります
行き着いた答えは、誤解すら起きていない、でした そもそも情報が無いんです
この記事は「誤解を正す記事」ではなく「情報が無い場所に地図を置く記事」です
俺は火力発電所の運転員を10年以上やっています 汽力もコンバインドサイクルも触ってきました
想定しているのは、進路を選んでいる工業高校生・高専生と、未経験でこの業界への転職を考えている人です
前半で発電所の種類と仕組み、後半でそこにいる人の職種を書きます
先に断っておくと、後半は全部運転員から見た景色です 俺は保全でも化学でもないので、見えていない部分は見えていないと正直に書きます
結論 発電所は「タービンを回す施設」で、そこには5職種がある
先に両方の答えを書きます
発電所の種類は多いですが、やっていることはほぼ全部同じで、何かの力でタービンを回して発電機を回すだけです 違うのは「タービンを何で回すか」という発電方式だけで、この記事で扱う中では例外は太陽光しかありません
そしてそこで働く人は、大きく分けると運転・保全・化学・技術/燃料・事務の5職種になります
この2つが分かれば、発電所という職場の地図はだいたい描けます 前半で1つ目、後半で2つ目を順番に開いていきます
磁力マル発電所ってぜんぶ違う機械だと思ってたけど、やることはタービンを回すだけなんでち!?
発電所の種類は4つ ─ 発電方式が違っても全部「タービンを回している」
大原則を最初に置きます
**水を沸かす、水を落とす、風を受ける、手段は違ってもゴールは全部「タービンを回す」**です
だから運転員は、電源の種類が違ってもある程度は話が通じます
そして太陽光だけがタービンを持ちません この違いが、後半の「人がいる/いない」の話につながる伏線になります


火力発電所 ─ 汽力・コンバインドサイクル・内燃力の3種類
火力は燃料を燃やす発電所ですが、中身は3つに分かれます
- 汽力:ボイラーで水を蒸気に変え、その蒸気でタービンを回す方式で、燃料は石炭・LNG・石油
- コンバインドサイクル:まずガスタービンを回し、その排熱でもう一度蒸気を作って蒸気タービンを回す方式
- 内燃力:ディーゼルエンジンやガスエンジンで発電する方式で、離島や非常用に多い
内燃力だけは厳密にはタービンではなく、エンジンで発電機を回します 何かの力で発電機を回すという意味では同じ仲間です
内燃力は俺に運転経験が無いので、仕組みの説明までにしておきます
運転員から見た一番大きな差は、起動時間です
汽力の1,000MW級で起動に約3時間、コンバインドサイクルの1軸で約1時間と言われています(出典:電験一種 H23 電力管理 問2)
さらにDSS(Daily Start and Stop=毎日起動と停止を繰り返す運用のこと)の設備だと、当直の仕事そのものが変わります
毎日起動停止をする当直と、年に数回しか起動しない当直では、同じ火力でも別の仕事に近いです
汽力の主幹系統の用語は27語にまとめました


コンバインドサイクルが汽力と何が違うかは、差分11語で追うのが早いです


俺が汽力からコンバインドサイクルへ移った時の話は下記記事に書いています





起動に3時間かかる設備と、1時間で立ち上がる設備では当直の忙しさが全然違います
水力発電所 ─ 一般水力と揚水の2種類
水力は、高い所から落とした水で水車(水のタービン)を回します 燃料がいらないのが最大の特徴です
もう1つが揚水で、夜間や電気が余っている時間に水を汲み上げておいて、必要な時に落として発電します
俺は水力の運転経験が無いので、ここも仕組みの説明までにしておきます



揚水って、電気を水の高さで預かっておくってことでち!はじめて聞いた時、ぼくはよく考えたなあと思ったでち!
原子力発電所 ─ 熱源が違うだけで構造は火力と同じ
原子力は、核分裂で出た熱で蒸気を作り、その蒸気でタービンを回します
熱源が違うだけで、タービンを回す構造そのものは火力と同じです
数字だけ置いておきます
- 2026年8月時点で運転中33基、うち再稼働したのは15基(出典:日本原子力産業協会)
- 2024年度の発電電力量に占めるシェアは9.4%(出典:資源エネルギー庁)
原子力にも当然、運転員がいます
ただし俺は経験がないので、中身は書きません
再生可能エネルギー ─ 太陽光・風力・地熱・バイオマス
再エネは4つ押さえておけば十分です
- 太陽光:光をそのまま電気に変える方式で、タービンを回さない唯一の存在
- 風力:風でそのままタービン(風車)を回す
- 地熱:地下から取り出した蒸気でタービンを回す
- バイオマス:木質ペレットなどを燃やして蒸気を作るので、設備としては汽力とほぼ同じ
ここで人の話への伏線を1つ打っておきます
太陽光の導入量は2025年3月末で7,680万kW(出典:資源エネルギー庁)と桁違いに多いのに、常駐の運転員はいません
つまり「発電所の種類の数」と「そこで働く人の数」は比例しないんです



太陽光だけタービンを回さないでち!だから常駐の運転員もいないでち!
日本の電気は今、何の発電所で作られているのか(2024年度の電源構成)
数字を出します
2024年度の日本の発電電力量は9,911億kWhでした(出典:資源エネルギー庁「令和6年度エネルギー需給実績(確報)」2026年4月14日公表)
内訳は火力67.5%、再エネ23.1%、原子力9.4%です
もう少し細かく見ると、天然ガス3,194億kWh、石炭2,785億kWh、石油等711億kWh、太陽光981億kWh、水力735億kWhという並びになります
※火力・再エネ・原子力の構成比は資源エネルギー庁の公表値、燃料別の発電電力量は同資料の内訳です


ここで言いたいことは1つです
日本の電気の約7割は、今も火力が作っています
未経験の入口として一番広いのが火力なのは、この数字がそのまま理由になります
じゃあ火力はこの先どうなるのか、という話は事実だけ並べます
- 火力の設備容量は2016年度の1.65億kWから2023年度は1.49億kWへ減っている(減っているのは石油等で、石炭は増えている)(出典:資源エネルギー庁「発電分野をめぐる最近の動向と今後の進め方について」2025年8月)
- 2040年度の見通しでも、火力は3〜4割程度が残るとされている(第7次エネルギー基本計画)
- 火力は「供給力」「調整力」「慣性力・同期化力」の3つの役割を担うと国の計画に明記されている
この並びに賛成とも反対とも書きません
数字を置くところまでが俺の仕事で、判断は読んだ人がするものだと思っています



再エネが増えたと言われますが、7割は今も火力です 未経験で入る場所が一番多いのも火力です
発電所は「装置」ではなく「職場」です
電気には、貯めておけないという厄介な性質があります だから発電所は、需要に合わせて秒単位・分単位で出力を合わせ続けないといけません
需給調整市場では、一次調整力という商品のうちオンラインで指令を受けるものは、応動時間が10秒以内と決められているくらいです(出典:電力需給調整力取引所)
ただ、この10秒に応えているのは人の手ではありません ガバナフリーやLFCと呼ばれる自動制御が、指令を受けて出力を動かします 秒単位の調整はもう自動が主流で、遠隔で監視して人が常駐しない発電所もあります
それでも人が24時間そこにいるのは、自動が想定していないことが起きるからです
警報が鳴った時に原因を切り分ける 起動と停止をやり切る 設備を隔離して保全へ渡す このあたりは自動化されていません
だから「運転員」という職業が存在します
自動と人の操作をつないでいる道具の話は下記記事にまとめてあります


「発電所の種類」を説明した記事は山ほどあるのに、そこに人がいる話はほとんど見つかりません ここから先が、この記事の本題です



秒単位の調整は自動がやってくれます 人が24時間いるのは、自動が想定していない場面で判断するためです 俺の仕事はそっちです
発電所の仕事の全体図 ─ 働く人は5職種に分かれます
ここから先は運転員から見た景色です
俺は保全でも化学でもないので、見えている範囲だけを書きます


運転 ─ 24時間、プラントを動かし続ける
火力発電所の仕事内容としてイメージされやすいのが、この運転です プラントオペレーターと呼ばれることもあります
交代勤務で中央制御室(中央操作室とも呼びます)のDCSを操作し、現場をパトロールし、設備の起動・停止と出力調整をやります 警報が鳴れば原因を切り分けて対応します
この職種の特徴は、唯一24時間そこにいることです だから保全とも化学とも技術とも接点ができて、他の全職種と話す職種になります
深掘りは全部こっちに置いてあります
- 勤務形態の実態は


- 実際きついのかという本音は


- 必要な資格は


ここでは、5職種の中での位置だけ押さえてもらえば十分です
保全(機械・電気・計装)─ 設備を直す人、そして仲介役
平日はだいたい毎日、何かしら絡みます
一番多いのが日常保守の流れで、1サイクルはこうなります
- 運転側で事前にアイソレしておく(アイソレ=設備を止めて電源や弁を隔離し、人が安全に作業できる状態にすること)
- 作業開始前に保全へ引き渡す
- 作業が終わると連絡が来て、運転が復旧する
面白いのは、計画を持っているのは保全で、実際に設備を止めて渡すのは運転という分担になっていることです
どの設備をいつ見るか、点検の周期も内容も決めているのは保全です
運転はその計画に合わせてアイソレし、引き渡します
定検(定期点検=設備を止めてまとめて点検する期間のこと)も同じで、保全からアイソレ依頼が来て、運転がアイソレして引き渡します
運転側が起点になるのは別の場面です
パトロールや運転中に不具合を見つけた時に、運転から補修依頼を出して対応してもらいます
そして保全はもう1つ顔を持っていて、運転とプラントメーカー・業者の仲介役でもあります
現場で何かを直す時、この仲介がないと話が前に進みません


計装の先には、DCSエンジニアという道もあります





アイソレって隔離のことでち!勝手に動かないようにしてから、はじめて人が触れるでち!
化学 ─ 水質を見て、運転に指示を出す人
化学が見ているのは主に水質です
ボイラーの水質の見合いで、缶水ブロー(缶水ブロー=ボイラーの中の水を一部抜いて、濃くなった不純物を減らす操作のこと)の依頼が運転に来ます
排水処理や純水の水質チェックも化学の担当です
ここで見えてくるのが、数字を見る人と手を動かす人が分かれている構造です
化学の判断が、そのまま運転の操作になります
交代勤務ではありませんが、運転と近い組織に置かれていることが多く、距離が近い職種です
水質の技術的な中身は俺の担当外なので、ここは踏み込みません
技術・燃料 ─ 運転からは全部は見えない部署
見えている範囲だけ書きます
- 難しい計算をやってくれている
- 用役関係も担当している
- 薬品の受け入れ手配もやっている
そして正直に書くと、運転からは技術・燃料が何をやっているか全部は見えていません
学歴の傾向でいうと、大学卒が多い印象があります
じゃあ工業高校ルートだとどうなるのか、という話は下記記事にまとめました





正直、技術と燃料が何をやっているかは運転からは全部は見えていません 見えないものを知ったふうに書くのは違うので、ここは正直に書きます
事務 ─ 発電所という「会社」を回す人
総務・経理・労務・購買など、発電所という事業所を成立させている仕事です
運転からの接点は限定的で、ここも正直、あまり見えていません
それでも1つ言えるのは、発電所は理系だけで回っている職場ではないということです
「発電所=理系の職場」というイメージだけで進路を狭める必要はないと思います
数字で見える「どの発電所に入るか」の差 ─ 勤続17.5年という職種
ここで公的な数字を1つだけ出します
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に、職種小分類「発電員,変電員」という区分があります
これが運転側の数字です
- 平均年齢44.2歳
- 勤続年数17.5年
- 超過実労働18時間/月
- 推定年収は企業規模1,000人以上で約716万円、10〜99人で約545万円
※年収そのものは公表されていないので、きまって支給する現金給与額×12+年間賞与で算出した推定値です
同じ発電所の運転員でも、会社の規模で170万円くらい差が出ています
もう1つ重い数字があって、この調査に出てくる「発電員,変電員」の労働者数は約25,130人です(企業規模10人以上)
同じ調査の電気工事従事者は約22万人なので、だいたい9分の1です
情報が世に無いのは当然です
なお、保全・化学・技術・事務の年収はここには書きません
その粒度の公的統計が存在しないので、推測で数字を出すのは違うと思っています
ここまで書いてきたのは発電所そのものの種類ですが、その発電所を持っている会社にも種類があります 発電所の種類はこの記事、会社の種類はこっち、という住み分けで読んでもらえると迷いません
- どの会社の発電所かで待遇が変わる話


- 年収の内訳と相場そのもの





同じ運転員でも、会社の規模で170万円くらい差があるでち!どこの発電所に入るかは大事でち!
発電所は入口で人生が固定されない ─ 職種間の異動は全然あります
最後に、一番伝えたいことを書きます
職種間の異動は全然あります 希望を出せば行けることもありますし、人が足りない方へ異動になることもあります
運転で入ったら一生運転、ではありません
入口は入口でしかありません
ただし、全部の発電所がそうだとは言えません 会社の規模や体制で事情は違うので、そこは面接や説明会で確かめてください
さっきの勤続17.5年という数字を、もう一度出します
長く続けられる職種だという読み方もできますし、外で通用しないんじゃないかという不安の裏返しでもあります
その不安をどう扱うかは、こっちに全部書きました





運転で入っても、そこで人生が決まるわけじゃありません 入口は入口でしかないです
まとめ ─ 発電所という職場の地図
要点は3つです
- 発電所の種類は多いが、やっていることは「タービンを回す」でほぼ共通している
- 日本の電気の約7割は今も火力で、未経験の入口が一番広いのも火力
- そこには運転・保全・化学・技術/燃料・事務の5職種があり、入口で人生は固定されない
最初に書いたとおり、この記事は情報が無い場所に地図を置くつもりで書きました 地図が手に入ったら、次は歩く番です
- 未経験からこの業界を目指すなら
- 転職先の選択肢を比べるなら












