汽力発電の主機系統|新人が最初に叩き込まれる用語を運転員が解説

汽力発電主幹系統用語アイキャッチ

前職の汽力発電所で新人だった頃、机上教育で最初に叩き込まれたのが主幹系統の用語でした

先輩から渡された資料は略語だらけで、正直、教科書と現場で言い方がずれる場面も多くて、最初はかなり戸惑った覚えがあります

今はどうにか使いこなしているものの、当時の自分に整理して渡すつもりでこの記事を書きます

対象読者はこんな方をイメージしています

  • 電験・エネ管・1級ボイラー技士など試験勉強中の方
  • これから発電所に配属される新人・内定者の方
  • 保全や技術系で、運転員と話が通じるようになりたい方

並べる順番は五十音でも辞書順でもありません 水と空気の流れ順です

理由は後で書きますが、これが一番速く頭に入ります


目次

主幹系統は水と空気の流れで27語を一気に覚える

結論から書きます

主幹系統は4つに分けて覚えます

  • 復水・給水系(7語)
  • ボイラー系(7語)
  • タービン系(7語)
  • 通風系(6語)

合計27語

順序に意味があります

「水が復水で回収され、ボイラーで蒸気になり、仕事をして、また水に戻る」ラインと、「空気が入って排ガスで出ていく」ライン この流れに沿って並べれば、暗記ではなく理解として頭に入ります

1語ずつ辞書引きするより、系統ごと一本読みしたほうが圧倒的に速いです

磁力マル

27個もあるでちか!?覚えきれないでち!

電力ニキ

安心してください、机上教育でおよそ1週間かけて叩き込まれる基本セットです 流れで覚えれば必ず入ります


なぜ新人はまず主幹系統から叩き込まれるのか

この骨組みが頭に入っていないと、応用も異常時対応も何も始まらないからです

現場では、DCS画面もP&IDも警報も巡視ルートも、全部この用語で書かれています

用語が抜けたままだと、ミーティングで飛び交う先輩や上長の会話が完全に呪文にしか聞こえません

俺自身、新人の頃はミーティングの内容がまったく訳が分からず、机上教育で覚えた用語がだんだん結びついていって、やっと少しずつ理解できるようになっていきました

もっとも、いきなり「○○起動しといて」なんて指示は来ません

俺の場合は1年目に現場を覚えて、2年目からやっとDCS操作を少しずつ教えてもらえるようになりました

GTCCの新しめのプラントは自動化がかなり進んでいるのでもっと短いと思いますが、昔ながらの発電所だとこれくらいのスピード感です

とはいえ、机上教育での用語叩き込み自体はおよそ1週間で通過します
ここが土台になるので、走り抜けたい期間です

積み上げの順序は決まっています

用語 → 系統 → 役割 → 運転操作

この一番下の土台が用語習得です 運転員としてのスタートラインとも言えます

逆に言えば、用語さえ入ってしまえば警報対応もDCS操作も資格勉強も全部この上に積み上げられます

ちなみに1級ボイラー技士の勉強でも、ここが土台になります 資格まわりは発電所オペレーターに必要な資格3つにまとめてあります

机上教育を終えてから交代勤務デビューするのが定番の流れです 現場のシフト実態は発電所の交代勤務の実態を参考にしてください


復水・給水系統|水をボイラーへ送るライン(7語)


発電所主幹系統図

まずは復水・給水系 発電所の水の起点は復水器 ここで水を回収し、給水ポンプで昇圧してボイラーへ送るラインです

会社にもよりますが、脱気器までを「復水」脱気器以降を「給水」と呼び分けます

復水器(Condenser)

定義

 低圧タービン排気の蒸気を海水などで冷却凝縮し、水に戻す熱交換器

現場では

 コンデンサと呼びます 下部にあるホットウェルに凝縮した水を溜め、そこから復水ポンプで吸い出します タービン背圧を真空近くまで下げる役割もあります

復水ポンプ(CP:Condensate Pump)

定義

 復水器のホットウェルに溜まった復水を、給水加熱器(LPH)等を経て脱気器方向へ送るポンプ

現場では

 CPと呼びます 復水系統の起点ポンプです

グランド蒸気コンデンサグラコン:Gland Steam Condenser)

定義

 タービン軸封部(グランド)から漏れる蒸気(グランド蒸気)を凝縮回収する熱交換器

現場では

 グラコンと呼びます 名前は地味ですが、軸封系統の圧力バランスを保つ大事な役です

エジェクター(Ejector)

定義

 高速蒸気をノズルから噴出させ、復水器のの空気を吸い出す真空発生装置

現場では

 エゼクタとも呼びます 復水器内で凝縮しきれなかった不凝縮性ガス(主に空気)を抜いて、真空を維持します

脱気器(Dea:Deaerator)

定義

 タービン抽気を給水に直接接触させて加熱し、溶存酸素などのガスを分離除去する熱交換器

現場では

 ポイントは直接加熱水と蒸気が同じ空間で混じり合います 給水加熱器のように管で仕切らないのが大きな違いで、これで溶存酸素を分離除去して配管腐食を防ぎます

ボイラー給水ポンプ(BFP:Boiler Feed Pump)

定義

 脱気器の水を高圧に昇圧してボイラへ送るポンプ

現場では

 BFPと呼びます 蒸気タービン駆動タイプはBFP-T、電動タイプはBFP-Mと区別します 主蒸気圧力を上回る吐出圧が必要になるため、発電所の中でも一二を争う高圧・大容量のポンプです

給水加熱器

定義

 タービン抽気を熱源として給水を段階的に加熱する熱交換器 低圧側はLPヒーター(LPH)、高圧側はHPヒーター(HPH)と呼びます

現場では

 低圧は脱気器の前高圧はBFPの後に配置され、給水を段階的に温めていきます 給水はチューブ(管)の中を通り、抽気蒸気は管の外側で加熱します 水と蒸気は交わらない構造

電力ニキ

復水器、給水加熱器、脱気器はどれも熱交換器ですが、脱気器のみ直接加熱です よく覚えておいて!

磁力マル

グラコン、名前かわいいでち!


ボイラー系統|水を蒸気に変える流れ(7語)

発電所主幹系統図

次はボイラー系 給水を燃焼熱で蒸気に変える装置群です

給水がボイラーに入ってから、蒸気になって出ていくまでの流れ順に並べます

節炭器(ECO:Economizer)

定義

 ボイラ排ガスの残熱で給水を予熱する装置

現場では

 エコノマイザ、略してECOと呼びます 名前の由来は「石炭を節約する器」です

蒸気ドラム(Steam Drum)

定義

 ボイラ上部にあり、蒸発管から上がってきた気水混合物を、水と飽和蒸気に分離する円筒容器

現場では

 単にドラムと呼ぶことも多いです 分離された飽和蒸気は過熱器へ、水は降水管を通って水ドラムへ下降します 強制循環方式では、この降水管にBCPを設置して循環力を補助します

ボイラ循環ポンプ(BCP:Boiler Circulating Pump)

定義

 ボイラ水を強制的に循環させるポンプ

現場では

 BCPと呼びます BCPがある方式を「強制循環ボイラ」ない方式を「自然循環ボイラ」と呼んで区別します 高圧域では自然循環が弱まるため、強制循環ではBCPが循環力を担います

水ドラム(Water Drum)

定義

 ボイラ下部にあり、蒸気ドラムから降りてきたボイラ水を蒸発管に均等に配るドラム

現場では

 ボイラ水循環の分配役です プラントによっては水ドラムがなく、ただのヘッダー(分配管)だけの構成もあります

蒸発管(Evaporating Tube)

定義

 火炉壁面に配置され、内部の水が燃焼熱と熱交換して蒸気になる管

現場では

 単に蒸発管、または火炉水管と呼びます ここで水が蒸気に変わる、発電の原点です

過熱器(SH:Superheater)

定義

蒸気ドラムからの飽和蒸気を、燃焼ガスでさらに加熱して過熱蒸気にする装置

現場では

 SH(スーパーヒーター)と呼びます ここで温度を上げないとタービン翼が水滴で削れます

再熱器(RH:Reheater)

定義

 高圧タービンで仕事を終えた蒸気を、ボイラへ戻して再加熱する装置

現場では

 RH(リヒーター)と呼びます 再熱で熱効率が上がり、低圧側の湿り度も抑えられます

磁力マル

略語まとめて一気読みでち!ECO=エコノマイザ、BCP=ボイラ循環ポンプ、SH=スーパーヒーター、RH=リヒーター


タービン系統|蒸気で回して仕事を取り出す(7語)

発電所主幹系統図

次はタービン系 蒸気の圧力とエネルギーを回転力に変える段です

主蒸気の入口から順に、蒸気の流れに沿って並べます

主蒸気止弁(MSV:Main Stop Valve)

定義

 ボイラ→高圧タービン間の主蒸気配管に付く緊急遮断弁

現場では

 MSVと呼びます タービンを止めるための遮断弁、異常時に主蒸気を強制遮断します

蒸気加減弁(GOV:Governor Valve)

定義

 高圧タービン入口に付き、高圧タービンへの蒸気流量制御する弁

現場では:

 正式にはガバナは調速機のことを指しますが、現場ではGOVをそのままガバナと呼ぶこともあります
 どっちが間違いという話ではなく、現場と教科書の呼び方のずれとして押さえておいてください 俺も新人時代、これで先輩に確認し直した記憶があります

高圧タービン(HP:High Pressure Turbine)

定義

 ボイラからの最も高温高圧の主蒸気を最初に受けて仕事をするタービン

現場では

 HPと呼びます 主蒸気の持つエネルギーをここで最初に回収します

再熱蒸気止弁(RSV:Reheat Stop Valve)

定義

 再熱器→中圧タービン間の再熱蒸気配管に付く緊急遮断弁

現場では

 RSVと呼びます MSVの再熱側版と押さえておけば早いです

インターセプト弁(ICV:Intercept Valve)

定義

中圧タービン入口に付く制御弁 負荷しゃ断時の過速度から中圧・低圧タービンを守ります

現場では

ICVと呼びます RSVとセットで中圧側の安全+制御を担います

中圧タービン(IP:Intermediate Pressure Turbine)

定義

 再熱器で再加熱された蒸気を受けて仕事をする中間圧力段

現場では

 IPと呼びます 再熱蒸気をここで受け止め、次のエネルギーを取り出します

低圧タービン(LP:Low Pressure Turbine)

定義

 中圧タービンから抜けた低圧蒸気を受けて最終的な仕事をする段

現場では

 LPと呼びます 蒸気は低圧側へ進むにつれて膨張していくため、翼は段を重ねるごとにどんどん巨大化していきます LPの翼は特に長く、ケーシングも大型です

磁力マル

MSV/GOV/RSV/ICV、この4文字略語ラッシュが新人殺しでち!

電力ニキ

俺も新人の頃、GOV開度って言われて「え?ガバナのこと?」ってなった記憶があります 現場と教科書でズレる代表例ですね


通風系統|空気を入れて排ガスを出す(6語)

最後は通風系 燃焼用の空気を押し込み、排ガスを煙道から抜くラインです

空気の入口から順に、実際の流れに沿って並べます

押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)

定義

 ボイラ火炉に燃焼用空気を押し込むファン

現場では

 FDFと呼びます 通風系統の起点、燃焼に必要な空気を供給します

空気予熱器(AH:Air Heater)

定義

 ボイラ排ガスの残熱で、押込通風機からの空気を予熱する装置

現場では

 エアヒーターと呼びます 節炭器と並ぶ排熱回収の主力です

磁力マル

GRFとGMFが「出さない」係、SCRが「出たら消す」係でち!NOx対策は二段構えでち!

誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)

定義

 ボイラ後流の排ガスを吸い出して煙突へ流すファン

現場では

 IDFと呼びます FDFとIDFの組み合わせで平衡通風方式を作ります

磁力マル

FDFは押し込み、IDFは吸い出しでち!読み方でセットで覚えれば混ざらないでち!

ガス再循環通風機(GRF:Gas Recirculation Fan)

定義

 節炭器出口などの排ガスを一部抜き取り、火炉下部へ戻すファン

現場では

 GRFと呼びます 火炉温度の調整、再熱蒸気温度制御に使います

ガス混合通風機(GMF:Gas Mixing Fan)

定義

 燃焼用空気に排ガスを混合するファン

現場では

 GMFと呼びます 主な役割はNOx抑制です排ガスを燃焼域に戻してわざと燃焼を悪くする(燃焼域の酸素濃度を下げる)ことで、NOxの発生を抑えます

電力ニキ

NOxにはサーマルNOxフューエルNOxの2種類がある!サーマルは高温燃焼で空気中の窒素が反応して出るNOx、フューエルは燃料自体に含まれる窒素分から出るNOx!GMFで狙って抑えられるのはサーマル側だ

脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)

定義

アンモニア接触還元法で、排ガス中のNOx(窒素酸化物)を触媒で窒素と水に分解して除去する装置

現場では

 煙道の途中に置かれる独立の設備です
排ガスの流れでは、節炭器の出口からAHへ向かう温度帯(おおむね300〜400℃)に位置します
 ここにアンモニアを吹き込み、触媒層を通すことでNOxを無害な窒素と水に変えます

 GMFが燃焼のやり方でNOxの発生そのものを抑える役なのに対し、SCRは出てしまったNOxを後処理で分解する役です
 発生抑制と後処理の二段構えで、発電所は規制値を守っています


まとめ|27語は運転員のスタートライン

汽力の主幹系統は、復水給水7語+ボイラー7語+タービン7語+通風6語=27語 これで一区切りです

覚え方の芯は最初に書いた通り、辞書引きより系統一本読みが速い 水と空気がどう回っているかをイメージしながら読み返すと、次に読んだ時にはもう頭に残っています

汽力の主幹系統を押さえておくと、GTCCの排熱回収ボイラ(HRSG)の理解も一気に早くなります

汽力→GTCCへの動き方は汽力→GTCC転職体験記にまとめました

これらの主幹系統を熟知した運転員は、DCSエンジニア転職でも武器になります このキャリアの伸ばし方はDCSエンジニア転職でどうぞ

机上教育の暗記量に最初は圧倒されるかもしれません そのリアルは発電所の運転員はきつい?本音で正直に書いています

警報対応、DCS操作、資格勉強、次のステップは何であれ、全部この27語の上に乗ります 逆に言えば、この土台がぐらついたままだと、後で必ず躓きます 最初に時間を使う価値は十分あります

電力ニキ

暗記ではなく、水と空気の流れとして頭に入れてください この土台さえ入ってしまえば、あとは全部乗せていくだけです

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この記事を書いた人

工業高校卒 | 火力発電所歴10年以上の現役運転員
汽力・GTCC(ガスコンバインド) | 石炭・ガス焚き | 横河・三菱・富士電機製DCS|計7ユニット運転経験
趣味はキャンプと釣り

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